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秋元康を利用する白石和彌(『サニー/32』)


『凶悪』で日本中に衝撃を与え、『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』等
現代にはびこる闇を面白エグく描く監督といして、
いま日本で最も輝く映画監督、白石和彌。

彼の最新作『サニー/32』が公開された。

しかし、白石監督作品としてはあまり盛り上がりを見せていない気がする。
なんといっても影に「秋元康」の姿があるからだ。
主演にNGT48をこの春卒業する北原里英を迎えた本作は、秋元康がいることで少なからず反感を覚える観客はいるだろう。

だから!この僕が!その印象を!拭い去ります!

この映画は皆様がが思うように「アイドル映画」です。
この映画が出来た成り立ちからもそれが分かる。

本作の出発点、それはちょっとしたサプライズであった。「AKB48」グループの総合プロデューサー、かの秋元康氏から「白石和彌監督に北原里英主演で映画を撮ってほしい」とのオファーが日活へと届いたのである。これだけでもインパクト大のトピックだが、決定的だったのは、北原里英のフェイバリットムービーの1本に白石監督の『凶悪』があり、彼女自身も「ぜひ『凶悪』のような作品に出たい!」と言っている、と―。
『サニー/32』公式サイト PRODUCTION NOTEより

なので、どこまでいっても「北原里英のための作品」なのは間違いない。

しかし、それを利用するのが白石監督。
アイドル映画だからこそ、アイドル映画の新しい枠を作った。

『サニー/32』は少女犯罪者と彼女に神的尊敬を求める信者たちの話
(予告で描いていることはこの映画の1/4くらいなので、そこも楽しんでください)。
それは、アイドルとファンの関係と一緒。
自分たちの人生ではなかったものを彼女たちに求める。
子供のころは何者にもなれると思っていた。現実は違う。
夢は叶えられず、人間関係も思ったよりうまくいかず、自分の不甲斐なさにもがく。
だから、アイドルじゃなくても、スポーツだったり、ドラマだったり、映画だったり、
様々なものに現実逃避を求める。
この映画のサニー信者たちも一緒だ。
自分たちが起こせなかった行動をサニーが体現してくれたから。

しかし、そのアイドルたちも同じ人間。
同じような悲しみを抱えているのはアイドルも一緒だ。
AKBのドキュメンタリーを見ればその苦しみが見て取れる。

“サニー”と呼ばれる史上最もかわいい殺人者もその「悲しみ」からの殺人であったと語る。

だからこそ、ラストにサニーの後継者となりそうだった者が下した結論が、
白石監督たちの想いなのかもしれない
(白石監督も昔とは違い、自分たちも子供の親になったことが作品に影響してると語っている)。
まさにアイドルから卒業する北原里英に対し、
これからひとりで芸能界を歩いていく上で、そういう意思を持って欲しいと伝えているみたい。
そんな現代のアイドル論から見る社会を描く新しい「アイドル映画」に白石和彌は挑戦している。

また、白石監督はただのアイドル映画にしないために、
北原里英と対になる共演者に実力派若手俳優、門脇麦を置いた。
北原里英に半端な演技をさせないプレッシャーを与えている。
かなりドS笑。
でもこれも、卒業し、ひとりのアイドルがその足で芸能界を歩いていくための白石和彌なりの愛。
それこそが、普通の女の子が一人前の女性になる過程を描く、真の「アイドル映画」である。

企画が始まったのは秋元康からだったかもしれない。
だけど、白石和彌はただそれに乗っかるのではなく、
そのアイドル映画なりうる企画を、白石監督らしい新しい「アイドル映画」にし、
利用しまくってできたのが『サニー/32』だ。

新しい真の「アイドル映画」を、白石和彌の挑戦を是非、
あなたの目でも確認してください。


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